働き方の「聖域転換」から脱出する——『タイム・バインド』とワーク・ライフ・バランス研究が教える真の両立術
戦略コンサル、グローバル企業での事業開発、エグゼクティブの実務に加え、アーティスト・研究者・母の視点から発信しています。無料記事はサポートメンバーの支えで成り立っています。共感いただけた方は、ぜひご参加ください。
「家庭を大事にしたい」と思っているのに、なぜか仕事を優先してしまう——。 そんな経験はありませんか? 実はその問いに、アーリー・ラッセル・ホックシールドの『タイム・バインド』が答えを投げかけてくれます。
コロナ禍で働き方が一変し、在宅勤務が日常化した今こそ読み返したい一冊です。1990年代のアメリカで書かれたにもかかわらず、この本が現代の日本で働く私たちに投げかける問いは切実です。 なぜ多くの人が「家庭第一」と口では言いながら、実際には長時間労働を選択してしまうのか?
先日、認定心理士の会で行われたワーク・ライフ・バランスの研究発表を聞きながら、私はこの古典的名著の洞察の深さを改めて実感しました。
職場が「聖域」になる逆説
ホックシールドが発見したのは、衝撃的なパラドックスでした。
「ファミリー・フレンドリー」を謳う先進企業で3年間調査を行った結果、フレックスタイム、パートタイム、育児休業といった制度があるにも関わらず、実際に利用する従業員はほとんどいなかった。それどころか、多くの人が自発的に長時間労働を選んでいたのです。
理由は経済的な不安だけではありませんでした。職場が、家庭よりも「居心地の良い場所」になっていたのです。
-
職場では努力が認められ、評価される
-
大人同士の知的な会話がある
-
秩序があり、問題には解決策がある
-
仲間意識と達成感を得られる
一方で家庭は:
-
終わりの見えない家事と育児
-
泣き叫ぶ子どもと夫婦間の緊張
-
誰も評価してくれない無償労働
-
混沌とした日常
この「聖域転換」は、現代の私たちにも当てはまるのではないでしょうか。
この記事は無料で続きを読めます
- サード・シフトという見えない労働
- 解決の鍵は「境界管理」にあり
- 私自身の境界管理術
- ポジティブ・スピルオーバーを活用する
- 更年期女性への特別な配慮
- まとめ:境界のない時代の生き抜き方
すでに登録された方はこちら