「強奪はケアでしょ?」──ハンマーを持った天使・ナイチンゲールの本当の顔
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「やさしさ」の奥に潜む、苛烈な闘志」
小さい頃、私はナイチンゲールの伝記を何冊も読んできました。「ランプを持った天使」と呼ばれ、病床を巡回し、傷ついた兵士たちを癒すその姿に、私はいつも胸を打たれていました。でも、あの「やさしさ」の背後に、こんなにも苛烈な闘志があったなんて。
栗原康さんの『超人ナイチンゲール』を読んだとき、私は思わず「これはナイチンゲールの再定義だ」と声をあげてしまいました。統計学を駆使し、官僚組織に乗り込み、戦地では軍の物資を"強奪"してまで人々を救った彼女は、まさに「ハンマーを持った天使」だったのです。
この本で描かれるナイチンゲールは、私たちが知っている聖母のような存在とはまるで違います。現実を変えるためには時として規則を破り、既存の秩序に立ち向かう──そんな革命家としての顔が浮き彫りになります。
「強奪はケアでしょ」──ケアの概念を根底から覆す
本書の中でも特に印象的だったのが、彼女の行動理念。「強奪はケアでしょ」という言葉(p.171)に、思わずページを閉じて考え込みました。ケアとは、単なるやさしさや奉仕ではない。時には秩序や規則を壊してでも、命を救い、暮らしを立て直す。そんな"行動する哲学"なのです。
この衝撃的なフレーズを読んで、私がGE時代に関わったアルジェの水処理施設プロジェクトを思い出しました。アルジェの約9割に水を供給するという国家的なインフラ整備。ところが、いざ現場に入ると、土壌は過去の化学兵器で汚染され、設備の運搬経路は寸断され、想定外の出来事が次々に起こりました。
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- 統計は感情を動かすためにある
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