離婚届からの逆転劇、「ありがとう」を実装した日から家庭が変わった

「まずはママから言わなきゃ」——ムスメの言葉が導いた、感謝と再生のプロジェクト。
秋山ゆかり 2025.08.01
読者限定

戦略コンサル、グローバル企業での事業開発、エグゼクティブの実務に加え、アーティスト・研究者・母の視点から発信しています。無料記事はサポートメンバーの支えで成り立っています。共感いただけた方は、ぜひご参加ください。

言葉は家庭のインフラか?

「愛してるよ」「大好きだよ」「ありがとう」

我が家で日常的に飛び交うこの言葉たちは、実は"家庭の心理的セーフティネット"なのだと気づいたのは、つい最近のことでした。

2025年2月。私は夫に離婚届を突きつけました。家庭というジョイントベンチャーにおける、出資比率と実務負担のあまりの偏りに、ついに限界が来たのです。

そんなある日、ムスメとのLINEで「愛してるよ、大好きだよ」といつものように送ると、ムスメからこんな返信が返ってきました。

「なんでパパにはもう"愛してるよ"って言わないの? ありがとうもママ、最近パパに言ってないよね」

私は正直に答えました。

「ありがとうって言われるようなこと、してもらってないから」

するとムスメは言ったのです。

「でも、まずはママが小さなことでも見つけて"ありがとう"って言わなきゃ。相手に伝わらないと思うよ」

ハッとしました。

私は戦略コンサルタントとして、企業の組織変革を数多く手がけてきました。その経験から言えるのは、組織の信頼関係は「フィードバックループの設計」によって大きく左右されるということです。

企業では、1on1ミーティングや称賛システム、チームビルディングといった仕組みを通じて、メンバー間のコミュニケーションを意図的に設計します。しかし、家庭では?

「愛情があるから、言わなくてもわかるはず」

そんな思い込みで、実は最も重要なコミュニケーション基盤を放置していたのです。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、4401文字あります。
  • ありがとうの再設計—感情と戦略の狭間で
  • 言葉がふるまいを変える—予想外の相互作用
  • データ駆動型感謝の実装—感謝ログは家庭のSlackである
  • 感謝の技術的負債と継続可能性
  • 家庭は感情のサーバーである
  • "勝手に期待して勝手に失望"を防ぐ次のステップ
  • 今日から始められる小さな一歩

すでに登録された方はこちら

サポートメンバー限定
「やること」より「あり方」を整える——年末に効く、ひとり壁打ちのススメ...
読者限定
「読んで!」が止まらない──読書好きな子どもを自然に育てる家庭のしくみ...
サポートメンバー限定
有終の美で終われなかったとき、私たちはどうすればいいのか
読者限定
「その日、その季節に読む贅沢」——『12月の本』がくれた静けさと思索の...
読者限定
いま、私を救ってくれているのは、夫が1時間かけて作る肉野菜炒めです
サポートメンバー限定
サンタはいつまで? ——卒サンタで見えた、子どもの成長と親の役割転換
読者限定
「この1冊」が、未来を考えるきっかけになる──本好きが贈るアドベントカ...
サポートメンバー限定
なぜムスメは学校に戻らないと決めたのか——子どもの尊厳を支える親の役割...