「パパ、なんで働いてるの?」——“問い”が磨いた家族の理念

夕食のひとことが、我が家の理念を動かした。理念は教えるものではなく、一緒に考えるもの。問いがある家庭は、日々アップデートされていく。
秋山ゆかり 2025.10.24
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家庭の理念が“生きている”と感じた瞬間

「パパはなんで働いてるの?」 夕食の食卓で、ムスメが何気なく聞きました。

突然の質問に夫が箸を止め、私が思わず笑ってしまいました。

この問い、どこかで聞いたことがある——そう、第3章Vol.4で家族憲法をつくったとき、最初に出てきたテーマでした。

理念を言葉にしたからといって、終わりではありません。それは「更新可能なシステム」であり、日々の問いによってアップデートされていく。 そのことを、ムスメは自然に体現していました。

「うーん……働くのは、家族の生活を支えるためかな」 夫が答えると、ムスメは首をかしげます。 「でも、それだけじゃパパ、つらくない?」

その瞬間、私は思いました。理念は“教えるもの”ではなく、“一緒に考えるもの”なのだと。

夫は少し驚いたように笑って、ゆっくりと言葉を選びました。
「確かに、お金のためだけだと苦しいね。でも、仕事で誰かの役に立てたときはうれしい。問題を解決できたとき、やっててよかったって思う」
ムスメが言います。
「じゃあ、パパは“人を助ける仕事”が好きなんだね」
「そうだね。助ける、というのはいい言葉だね」

そのやりとりを見ていて、私は気づきました。
家族の理念は、議事録のように上から下へ伝えるものではなく、 日々の会話の中で“更新されていく生き物”なのだということを。

家庭の中で理念が動き始めたとき、私はふと思いました。
家庭もひとつの「組織」だと、私はよく思います。
ミッションやビジョンを明文化しないまま、日々が流れていく。
企業では数年単位でビジョンを更新するのに、家庭では“理念の棚卸し”を誰もやらない。
でも、仕事で培った戦略思考を家庭に持ち込むと、 家族というチームの中に「対話のループ」が生まれるのです。

——理念とは、家庭を“動かす言葉”である。
それを形にするのが、私たちの家族PMプロジェクトの本質なのだと思います。

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続きは、4295文字あります。
  • 問いが生まれる家庭の設計図
  • 問いを育てる3つの環境設計
  • 理念をアップデートする日常の対話
  • 理念の継承ではなく、共創へ

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