「子どもの取説」作成術:育児を戦略的に進めるための具体的プロセス

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子どもという「プロジェクト」の不確実性
子どもという存在は、まさに「仕様不明」の状態でこの世に登場します。どんなに計画を立て、どんなに準備しても、育児は予測できないことの連続です。成長していく過程でさまざまな「バグ」(たとえば夜泣きやイヤイヤ期)も発生するし、アップデート(成長)のタイミングもわからない。まるで、明確な仕様書もKPI(重要業績評価指標)もないプロジェクトを進めているようなものです。
私が思い描いていた育児像は、ムスメと公園やお散歩に出かけたり、プールで遊んだりする日々でした。3歳のムスメの笑顔と元気な声が響く日常、そんな風景を想像していたのです。でも、現実は全く違いました。
ムスメは3歳のとき、6回もの入院と手術を経験しました。手術前の準備として、2週間もの隔離生活を強いられ、感染症を避けるために外出もできませんでした。病院に入院してからは、さらに2週間、小児病棟に完全隔離され、院内のコンビニにさえ行くことが許されない状況。その間、ムスメは痛みと不安で泣き叫び、私はそのただひたすらをあやし続ける毎日でした。
「つまらない」「痛い」「不安」と声をあげるムスメに寄り添いながら、私はその瞬間、自分が思い描いていた子育てが100万光年くらい遠い世界に感じられました。こんなはずではなかった、あんなに楽しみにしていた日々が、こんなにも遠く感じられることを初めて実感した瞬間でした。
さらに、ムスメが3歳の時、保育園での不適切保育が原因で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したことも、私にとっての大きな衝撃でした。まさか3歳の子どもがPTSDを発症するなんて思ってもみませんでした。保育園側がその事実を認め、謝罪があったことは事実ですが、それでもムスメが受けた心の傷は、言葉では言い表せないほど深いものでした。彼女が感じた不安や恐怖、そしてそれに対処する親としての自分の無力さに、心から悩みました。
親という役割は、まさにプロジェクトマネージャー。家族というチームを率い、限られたリソース(時間、体力、知恵)を使って、子どもという「製品」を最適化していくわけです。でも、問題なのは、子どもはどんどん成長し変化するので、その設計図も途中でアップデートしなければならないという点。つまり、親としての戦略や方向性を随時見直す必要があるのです。
取説を作るという「意義」
そこで登場するのが「子どもの取説」。取説というと、冷たい印象を持たれる方もいるかもしれませんが、実際には家族にとって非常に大きな意味を持ちます。それは、単に子どもの情報を集めて書き記すだけではなく、子どもの特性や癖、好み、苦手なことを理解し、それに合わせた環境を整えるための「コミュニケーションツール」でもあるからです。