子育てもキャリアも諦めない夫婦へ――『デュアルキャリア・カップル』

育児も仕事も、どっちも大事。でも両立って本当にできるの? そんな夫婦に届けたい、未来設計のヒント。
秋山ゆかり 2025.06.09
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月曜の朝、コーヒーを片手にスマホをスクロールしていると、同期のLinkedinが目に入りました。プロモーションを祝う投稿に「夫の海外転勤についていくので退職します」というコメント。思わず画面を見つめ直しました。

私自身も同じような選択に直面したことがあります。GE時代、夫とふたりでキャリアパスを描こうとしたとき、どちらかが「主」でどちらかが「従」という前提で話し合っていた自分たちに気づいたのです。

いま私は上場企業の取締役として経営に関わる立場にあり、夫はマネジャーとして現場を率いる管理職です。立場や役割は違っても、キャリアを本気で追いかけているという意味で、私たちは“非対称なデュアルキャリア”の当事者です。

そんな既視感を、INSEAD准教授ジェニファー・ペトリグリエリによる『デュアルキャリア・カップル』を読みながら何度も感じました。この本は、「どちらかが諦める」というゼロサムゲームから抜け出し、「ふたりで勝つ」戦略を教えてくれる一冊です。

現代の「新しい当たり前」に立ち向かう

「結婚したら女性が家庭に入る」――そんな時代は終わったと思っていても、現実には「どちらかのキャリアが主で、もう一人が調整役」という構図が根強く残っています。

デュアルキャリア・カップルとは、文字通り「両者が野心的にキャリアを追求するパートナー関係」。でも統計を見ると、日本では共働き世帯が68.1%を占める一方で、管理職における女性の割合はいまだ15%程度。つまり、多くのカップルが「働いているけれど、キャリアとしては片方が中心」という状況に陥っているのです。

ペトリグリエリは、32カ国100組以上のカップルへの5年間にわたる調査から、デュアルキャリア・カップルが共通して経験する「3つの転換期」を特定しました。そして、これらの転換期を「危機」ではなく「成長の機会」として捉え直すアプローチを提示しています。

読み進めながら、私は自分たちの歩みを重ね合わせていました。GE時代の事業開発で海外のプロジェクト先で年間300日を過ごしていた時期、私のプロモーションによる海外転勤話が出た時、夫の転勤話が持ち上がった時、娘の出産で生活が一変した時期――。振り返ってみると、確かに私たちも同じような「転換期」を何度も経験していたのです。

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