「その日、その季節に読む贅沢」——『12月の本』がくれた静けさと思索の時間
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【出会いは10月】本屋で見つけた季節の読書シリーズ
10月のある日、いつも通りムスメとぶらぶらしていた本屋で、ふと手に取った一冊がありました。
その名も『10月の本』。
表紙に「<ひと月>をテーマに古今東西の文学作品を集めた12カ月のアンソロジー」とあって、「あら、なにこれ、おもしろそう」と思ったのが、すべての始まりでした。
本棚にそっと並べられていたその本を手に取ったとき、まず心を捉えたのは、その装丁の静かな佇まいでした。9月、10月、11月の3冊しかなくて、でも月ごとに色調が異なる表紙。10月は落ち葉を、11月は霜を思わせる色調で、どこか品があって、我が家の本棚に並んだときの姿まで想像してしまう。そんな本でした。
本はラップされているので、本屋さんではページを開くことができず、試しに『10月の本』を購入してみました。そして、急いで帰りの電車の中でページを開いてみると、そこには、古今東西の小説や詩歌、随筆たちが「季節」を軸に集められていて、いまこの瞬間と呼応するような言葉たちが並んでいたんです。
「10月の空気って、たしかにこんな感じ」
「この詩と同じ季節を、私もいま、生きてる」
そんなふうに、作品の息づかいと自分の時間が重なるような読書体験に、すっかり心を奪われました。
電車の中にいるのに、10月の冷たい空気の中を歩いた記憶と、ページの中の言葉が重なっていく。その不思議な感覚に、降りるはずの駅を通り越してしまい、ムスメに「ママ、いつまで夢中になってるの!通り越しちゃったよ」と怒られてしまいました。(そんなムスメも買ったばかりの本に夢中になって、駅を通り過ぎたことに気づかなかったのに。)
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